第115話 最近買ったもの2

■「マキタのターボ」が家に届いていたその日、それはある金曜日だったのだけれど、その日、僕は仕事を早めに切り上げて、その足で大阪は梅田にあるヨドバシカメラに向かった。
 ある家電製品を買うためだ。
 最近は家電製品であっても実店舗では買わずにネットで買うことが多い。この度の買物も、できればネット、それも楽天で買いたかったのだけれど、そうすると実際に手元に届くのに少々時間がかかる。今回ばかりは次の月曜日までには実物が手元に欲しかった。そのために今回ばかりは実店舗で買おうと思ったのである。

 何を買ったのか。
 
 それはICレコーダーだ。
 
 そんなものなんて買わなくても、今あるスマホで十分代用できるではないかと思われるかも知れない。確かに僕のスマホにはボイス何たらというアプリが入っていて、それを動かせば会話の録音は可能だ。
 しかし今回は少々目的が違う。もちろん会話を録音するのが目的であることには違いないのだけれど、時間や条件、シチュエーションといった件でスマホでは目的達成は無理だと思ったのだ。

 目的とは何か?

 ここでは詳細は伏せる。
 今ここで書けるのは
「証拠をきちんと残したい」
 そして
「気づかれずに」
 という程度だ。

 以前、某女性衆議院議員の自分の秘書に向けての「このハゲぇー!」に代表される暴言の録音が世間に公表され、このアホ女のパワハラが白日の下に晒されたが、これは被害者がICレコーダーの類を忍ばせて録音していたものだ。おそらくそこに至るまで相当なパワハラがあったからだろう。
 こういったパワハラ暴言のケースに関わらず「言った、言ってない」で揉めるケースは今やそこら中で見受けられる。醜い争いにならないまでも、実際の録音物がないが故に「認識の違い」というような見解レベルで相手の都合のいいように片付けられてしまったり泣き寝入りするというケースは、もはや日常的に発生していると言っていい。
 かく言う僕も、実は過去数ヵ月内に「聞いていた話と違う」、「事実と違う」、「認識に完全なるズレがある」といった要件がいくつか発生していたのだ。それらはその都度メモを取ってはいたものの、実際の録音物がなかったがゆえに、力関係等の都合上、どうしてもそこで終わらせるしかないというケースがほとんどだった。実被害はなかったものの、気持ちの上ではどうしても納得できなかったり、そんな必要はないはずなのに結局こっちが折れたりしたのだ。そういう場合、はっきり言って他者からの助けなんてまず期待できない。ましてや相手が組織レベルであったりすると尚更で、助けを求めるとなると有料のものしかない。そんな経緯があって実のところ結果的に僕は他人に対しては、ほぼ人間不信になってしまったのだ。そしてこうなった以上、これからは自分の身は更に自分で守るしかないという境地になった。それがための「ICレコーダー」なのである。

 実際の購入物の紹介は控えるが、廉価版でよく見受けられる形のものではなく、細長い筐体の物だ。パッと見だと太いペンのように見えないでもない。そして電源をONにしておかなくてもすぐに録音できて、操作音も出ないようにできるし、更には充電式で長時間連続録音可能、PCにも連携できる、もちろん音質もクリア等等、色々な機能を持っているものだ。値段は1万円もしなかった。上着のポケットに差し込んで電源をONにしておけば1日中録音可能だ。

 例えば会議や個人的な打ち合わせ等で理不尽なことを言われたり、パワハラもどきの発言を受けたりした際に、その完全なる証拠を残すことができる。
 そこまでのレベルでなくとも「言った、言ってない」の決着がきちんとつけられるだろうし、ニュアンスや認識のズレに対しても、そうなった経緯のそれなりの検証を後から行うことが可能になるだろう。
 更には見ず知らずの人間からの謂れの無い言いがかりにも対応できる。

 このご時世、無いよりはあった方が断然良いと思われるツールだと僕は思う。

 ただ、自分がこういうことをしようと思っているということは、既に世間では当たり前のことになっているということだとも思えるのだ。
 メディアで日々当たり前のようにICレコーダーやスマホの類で録音されたと思われる音声が公開されている。録音された側は録音されているという意識なんてなかっただろう。それはすなわち被録音者が、対峙している相手がそういうツールを仕込んでいるのだという意識を持っていなかったということに等しい。それを考えると自分が日々接している相手が、そういったことをしていないと誰が断言できるだろうか。
 信用している/信用していない、に関わらず他人との会話を秘密裏に録音していることなんて今のご時世だと当たり前だと思った方がいいと僕は今更ながらに思った。実は自分が知らないうちに自分の話したことが録音されていたってことが既にもう何度もあったんじゃないだろうか。
 例えば防犯カメラなんて誰に断りもなく僕たちの行動を録画している。その存在をあからさまにしている所があれば、まったくわからないように録画している所もある。つまりその存在を相手に告知する必要がないということだ。
 そういう点を考えると録音だって同じだろう。僕らが普段何の気なしに訪れてる場所には、実は僕らのわからない所に集音マイクが付け供えられていて、僕らの会話はすべて録音されていたりするかも知れない。信用している取引先の会議室にも実はこっそりカメラやマイクが仕掛けられていて何か問題が発生した際のためにきちんと記録物が残されているのかも知れない。もちろん自分の職場だって同じだ。社員を信用していない会社があったって今や珍しくも何ともない。少なくとも自分が使っているPCやメールなんぞは(大手の会社であれば)間違いなく監視&記録されている。だから壁に掛けられている絵画などに、こっそり超小型カメラや超小型マイクが仕掛けられていたって何の不思議もない。今やそんな世の中だと思った方がいい。
 
 ほんの数ヵ月前まで僕はここまで大袈裟には考えていなかった。いくら何でも人には相応の良識ってものがあって、人付き合いってものは、やっぱりお互いの信頼関係で成り立つものだと思っていた。言ってみれば相手に対して「性善説」を適用していたのだ。しかし今は違う。今は僕は「性悪説」を適用しているし世の中も信頼関係ではなくて損得関係で成り立っていると思える。だから自分の身を守ることをきちんと考えなければならない。今自分にできる防御を保険という観点で備えておくべきだと思っていて、それがゆえの「ICレコーダー」でもあるのだ。
 僕のこういった考え方は「悲しい」考え方だ。人間不信に陥ってしまったことは不幸なことだと思っているし世知辛い世の中にはウンザリもする。できれば他者を心の底から信用したいし前向きに交流したいとも思う。
 しかし今はそれができない。いや多分この先もずっとそうだろう。仕方がないと思う。これからのご時世、昔のような裸の付き合いなんて今のままである以上はできないと思う。

 ちなみに今、車にドライブレコーダーを設置することを検討している。悲しいことだが近いうちにこれも必要不可欠のものになるだろう。
 
 
 
【2017年10月15日日曜日記す】

第115話 最近買ったもの2” に対して 4 件のコメントがあります

  1. ちゅっぴ より:

    こんばんは♪
    知人の息子さんが、運転中、信号待ちだったのでしょうか、
    前にいるベンツに「コツン」とぶつけてしまいました。

    息子さんはもうガクガク。でもぶつけられた相手の方も穏やかで優しく対応してくれ、大ごとにならず、修理費十万円で片が付いたのですが‥。

    一応診察を受けてもらい、体に問題は無し、
    しかもぶつけたのは事実だから十万円で済んだのはよかったといえばよかったのですが、
    後で冷静になって考えてみると、本当に十万円もかかる修理だったのか。
    相手の言い値だったそうですしね。
    息子さん曰く、ぶつけた、と言われたところを目視したけれど、ほとんどわからなかった・・とか。
    今思えば現場を写真に撮っておけばよかった、と言ってたそうです。
    その後、彼は車にドラレコを設置しました。

    ICレコーダーに録音するのも「録音しますがいいですか」と了解を取らないと裁判では証拠にならないとかどうとか聞きました。(嘘か本当かはわかりませんが)
    なので、先に相手にわからないように録音スイッチを入れてからメモ帳とペンを取り出し、メモを取るそぶりで「今から記録しますがいいですね」との言質をとってからだといいそうです。
    本当はそういう機会に恵まれない方がいいんですけれどね^^;

    1. イクタシバ イタル より:

      ちゅっぴさん こんばんは。
      コメントありがとうございます。

      >こんばんは♪
      >知人の息子さんが、運転中、信号待ちだったのでしょうか、
      >前にいるベンツに「コツン」とぶつけてしまいました。
      >
      >息子さんはもうガクガク。でもぶつけられた相手の方も穏やかで優しく対応してくれ、大ごとにならず、修理費十万円で片が付いたのですが‥。

      >一応診察を受けてもらい、体に問題は無し、
      >しかもぶつけたのは事実だから十万円で済んだのはよかったといえばよかったのですが、
      >後で冷静になって考えてみると、本当に十万円もかかる修理だったのか。
      >相手の言い値だったそうですしね。
      >息子さん曰く、ぶつけた、と言われたところを目視したけれど、ほとんどわからなかった・・とか。
      >今思えば現場を写真に撮っておけばよかった、と言ってたそうです。
      >その後、彼は車にドラレコを設置しました。

      いや、僕はやるべきことは以下のことだったと思いますよ。
      ・警察を呼んで、きちんと事故証明を取る。
      ・加入している保険会社に連絡して、しかるべき手続きを取る。
      ・その場で勝手に相手と示談をしない。
      10万円で済んだのはラッキーだったと思います。
      もし後から、実はここも壊れていたから修理代を追加で出してくれ、
      あれから体の具合が悪くなって医者に行ったから医療費の補償をしてくれ
      というようなことを言われたりしたら……。
      そんなことになってから警察や保険会社に連絡しても受理してもらえるかどうか。
      偉そうなことが言える立場の人間ではありませんが、相手がいい人であったのなら
      尚更遺症が出てきたりした場合の加害者としての責任が果たせるようにしておく
      べきだと思うのです。
      せっかく高いお金を払って任意の保険に入っているのだからきちんと使うべきだと
      僕は思います。

      >
      >ICレコーダーに録音するのも「録音しますがいいですか」と了解を取らないと裁判では証拠にならないとかどうとか聞きました。(嘘か本当かはわかりませんが)
      >なので、先に相手にわからないように録音スイッチを入れてからメモ帳とペンを取り出し、メモを取るそぶりで「今から記録しますがいいですね」との言質をとってからだといいそうです。

      そうですね。
      付け加えるとすると日付や相手の名前もきちんと発声しておくことでしょうか。
      裁判沙汰になって、録音したのものを使う云々はさておき、それ以前に、
      それらしき録音がきちんと残っているという事実だけでまずは何かしらの
      波及効果があると思います。

      >本当はそういう機会に恵まれない方がいいんですけれどね^^;

      そうです、それが本当に一番ですね。

  2. hosohito より:

    >本当に十万円もかかる修理だったのか

    自分も3ヶ月ほど前、まったくおなじケースで事故にあいました。
    キズは目を凝らさないとわからないほどでしたが、
    相手が保険を使うということもあり、バンパー交換となりました。
    修理代は17万円。
    パーツだけでなく代車費用なども発生するので、国産車でもこうなります。
    事故って、思ってる以上に費用がかかるんですよね。
    これで人身扱いにでもなっていたら…。

    ドライブレコーダーの件ですが、
    ルームミラー取り付けタイプをおすすめします。

    1. イクタシバ イタル より:

      hosohitoさん こんばんは
      コメントありがとうございます。

      やはりそれくらいかかりますよね。
      しかるべき手続きを取ることが大事ですね。

      ドライブレコーダーは、これから検討中するつもりです。アドバイス、ありがとうございました。

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