第7話 スポーツ刈り

◆この前の土曜日、久しぶりに散髪に行った。確かこの前に髪の毛を切ったのは昨年の夏頃だったから、かれこれ半年ぶりということになる。

 半年も経つとさぞかし髪の毛が伸びているのだろうと思われるだろうが、実は半年前に切った際、何十年ぶりかで頭の左右と後ろ側に刈上げというものを施した。しかも地肌が見えるくらい超短くしてもらった。あまりにも短くしてしまったせいか切った後の顔を鏡でマジマジと見た際、自分の老け込み具合が鮮明になってしまったものだから少し落胆したのだが、すぐに歳なのだから仕方がないと開き直った。髪の毛を伸ばしたところでてっぺん辺りが薄毛になってきていて、かなり目立つようになったので、それはそれでみっともなく思えていたから、どうせなら短い方がいいと思った。それに超短く切ったおかげでそれから頻繁に散髪をする必要もなくなった。だから半年経った今くらいがちょうど「髪の毛が伸びすぎだ」というようなうっとうしさを感じる頃合になった次第なのである。

 本当は髪の毛を切るのは、もう少し暖かくなってからにしようと思っていた。というのもこの時期は例年になく寒い日々が続いていて、こんな時にボサボサに伸びてしまった髪の毛を、すっきり切ってしまったりしたら風邪を引いてしまうのではないかと思ったからだ。

 しかし無造作に頭を触ったりすると、その上にボサボサに伸びた髪の毛が気になる。あともう少し我慢だと言い聞かせても触る度に何かイライラする気持ちが湧き上がり、それが積もっていった。こうなるともう我慢ができなくなって精神衛生上不健康という状態になってしまう。

 そんなこんなで先日の土曜日、嫁さんには何も言わずに散髪屋へ向かった。
 僕が利用するのは安い散髪屋だ。カットだけだと1500円程度だ。若い頃はカットとシャンプーで4000円もするような店に通っていたが、結婚してからはなるべく安い店に行くようにしている。それは結婚してオシャレをやめたからというわけではない。4000円の店も1500円の店も大して変わりがないと悟ったからだ。

 いつもの店にいくと時間帯が悪かったせいか、1時間ほど待たされた。
 今回も超短めの刈上げをリクエストしたのだが、頭の左右側面と後ろ側だけでなく、全面的に超短めの刈上げを要求したところ、店員さんから「かなり短めのスポーツ刈りって感じでいいですか?」と訊かれたので迷うことなく「それでいい!」と答えた。

 20分後、目の前の鏡に映ったのは、あと一歩で坊さんというような自分の姿。白髪がかなりあるからか、光の加減でその部分が髪の毛がないように見えるから単なる「坊さん」ではなくてて「年寄りの坊さん」だ。
 たぶん実際の歳よりも老けて見えてしまうかなと思って落胆したのだけど仕方がない。もう後の祭りだ。

 自宅に戻った際、いきなり僕のその頭を見せられた嫁さんの第一声は、「うっ!」という呻き声のようなものだった。何も聞かされていない嫁さんは、おそらく見てはいけないものを不意に見てしまったというような心持ちになったに違いあるまい。
 もちろんその声を発した時に嫁さんのその体が思わず仰け反ってしまったことは言うまでもない。

 さあ、これでまた半年は散髪をする必要がなくなった。あとは暖かくなるまで風邪を引かないように気を付けることとしよう。
 ちなみに嫁さんはあの時「うっ!」という声を発して以来、僕の頭部については何ら言及していないということを付け足しておく。
 
 
 
【2017年2月20日月曜日 記す】

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