第2話 古いカセットテープ(1)

◆先日、クローゼットの中に入れっぱなしにしていたいくつかの収納ケースを整理していたら、ある収納ケースの中から昔の古いカセットテープが40本ほど出てきた。
 今の若い人たちにとっては「カセットテープ」なんてものは大昔の媒体であって、実際に使ったことがある人なんて本当に少ししかいないだろう。もしかしたら中にはカセットテープそのものを見たことがないという人もいるんじゃなかろうか。
 僕みたいな年代の人間にとってはカセットテープというと、かつてはもう空気に近い存在であったと言っても過言ではないほど、そばにあって当たり前のものだった。しかしパソコンやインターネットが一般家庭に普及して、かつ技術も進歩して、今やカセットテープはもちろんのこと、カセットテープを再生させる機械自体もとんとお目にかからなくなった。
 僕の家にはCDラジカセとカセットテープの再生機能を備えたCDコンポステレオというものが辛うじて残存しているので何とか聴くことができるのだけど、そういうものがまったくないというご家庭も珍しくないようになってしまった。これも世の流れなので仕方がないことなのだけど、自分にとって当たり前に存在していたものが、今や社会や時代の隅に置き去りにされているのだと思うとやはり痛烈な寂しさを感じてしまう。

 話を元に戻そう。

 久々に僕の目の前に姿を現した40本ほどの古いカセットテープは、どれも昔のままで、見たところ何も支障がない状態だった。最後にこれらに触ったのが、おそらく子供が生まれて間もない頃だっただろうから、もう四半世紀近く前のことだ。大抵の場合、それくらいの年月が経ってしまうと経年劣化で何かしらどうにもならないような状態になっているものなのだけど、前述したとおり、この40本ほどの古いカセットテープは当時と何一つ変わらない状態だった。

 僕は、(今もそうだけど)どちらかと言うときちんと整理整頓をする性格だからカセットテープも大抵の場合きちんと整理していた。タイトルはもちろんのこと、誰の何という曲か、そしてもちろん録音した日時も記入していたのだ。だがこの40本ほどの古いカセットテープの中に2本だけ添付の紙に何も記入していないものがあった。

 さて、これはいったい何のテープだったのだろうか?

 つたない記憶を辿ってみるも、まったく思い出せない。メモがされている他のカセットテープに関しては、それがいつ頃何のために録音したものかを比較的しっかりと覚えていたのに、メモのない2本のカセットテープについてはまったく記憶が蘇らない。もしかしたらこれらは僕のものではなくて誰か他の人のものを借りたりして、そのまま返さずに今に至っているのかもしれないと思ったのだが、それよりも嫁さんのものという可能性が高いように思えた。
 もしそうだとすると勝手に聴くというのは少々憚られる。単に昔、好きな曲などを録音したというものであれば大した問題にはならないだろうが、もしそれにとんでもないことでも録音されていたとしたら、たまったものではない。もしかしたら知らなくてもよかった過去を知ってしまうことになりかねないし、そうなると我が家にとって一大事となってしまう。

 しばらく熟考……。
 結果、詳細は割愛するが、それら2本の古いカセットテープが嫁さんのものである可能性はゼロという結論に達した。
 しかし、では何のテープなのか、やはり思い出せない。仕方がないので結局その2本の古いカセットテープを聴いてみることにした。

(次回「第3話 古いカセットテープ(2)」に続く)
 
 
 
【2017年2月15日水曜日 記す】

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