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【書評】第155回直木賞 荻原浩著「海の見える理髪店」を読みました。ちょっとほろっと…

第155回直木賞受賞作、荻原 浩さんの「海の見える理髪店」
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こんにちは。ネオです。

今回の記事では、第155回直木賞 荻原浩著「海の見える理髪店」を読みましたので、書評をお送りします。

第155回芥川賞受賞作、村田沙耶香さんの「コンビニ人間」
【書評】第155回芥川賞 村田沙耶香著「コンビニ人間」を読みました。うん、芥川賞の世界…こんにちは。ネオです。 今回の記事では、第155回芥川賞 村田沙耶香著「コンビニ人間」を読みましたので、書評をお送りします。 ...

◆直木賞

読書のイメージ
cocoparisienneによるPixabayからの画像

先日、「コンビニ人間」を読みましたので、そのままの勢いで直木賞受賞作「海の見える理髪店」も買って読みました。

芥川賞が純文学なのに対し、直木賞は大衆文芸作品の中で優秀なものに送られる賞です。

「娯楽性」「商業性」が重視されています。

ドラマで大ヒットした、池井戸 潤さんの「下町ロケット」などは、皆さんも記憶に新しいと思います。

正式には「直木三十五賞」と言います。

◆荻原 浩さん

本のイメージ
Dariusz SankowskiによるPixabayからの画像

1956年 埼玉県生まれ

1997年 「オロロ畑でつかまえて」第10回小説すばる新人賞

2005年 「明日の記憶」第18回山本周五郎賞

2014年 「二千七百の夏と冬」第5回山田風太郎賞

この方も、「コンビニ人間」の村田さん同様、作品がしっかりキャリアを重ね、今回の受賞に繋がっています。

◆【書評】第155回直木賞 荻原浩著「海の見える理髪店」

第155回直木賞受賞作、荻原 浩さんの「海の見える理髪店」

今回の作品は、6編からなる短編集になっています。

  • 海の見える理髪店
  • いつか来た道
  • 遠くから来た手紙
  • 空は今日もスカイ
  • 時のない時計
  • 成人式

どれも、すばらしい作品でしたがわたしの中では題名になっている「海の見える理髪店」「成人式」が特によかったですね。

読んだ後で感じたのですが、本の表紙のイラストのタッチ・色使いが作品集の全体のイメージにとてもよく合っています。

イラストは新目 恵(あらため めぐみ)さんです。

全体を通じて、感じたのは「時」ですね。

6編のうち、「空は今日もスカイ」以外は時がテーマのように感じました。

「時間」ではなくて「時」

だから、過ぎるではなくて「刻む」「経つ」ですね。
代表作の「海の見える理髪店」だけ、ストーリーに触れておきましょうか。

あとは、みなさんのお楽しみと言う事で…

本のイメージ
Dariusz SankowskiによるPixabayからの画像

【海の見える理髪店】

その理髪店は、商売をするにしては不便で辺鄙なところにあります。

店から見える景色はすばらしいのですが、駅からバスに乗りまたバス停から少し歩く距離にあり、お世辞にも常連客が通いやすいとは言えません。

ある一見の若い男性が、酔狂でなのかわざわざその理髪店に予約をいれて、散髪に訪れるところから物語りは始まります。

民家を改装したお店で、彼を迎えてくれたのは初老と表現していい、痩せた男性です。理髪店店主にしては、自分の髪には無頓着のような風貌です。

勧められるまま椅子に座り、店主の手馴れた手つきで散髪の工程は進んでいきます。

男性は普段美容院で髪を切っているため、理髪店の荒削りの中に感じる気持ち良さを久しぶりに味わっていました。

店主は風貌から伝わってくる感じより、饒舌でよく喋りました。

「こんな話退屈ではありませんか?」と店主は何度も聞くが、若い男性は都度話を聞きたい素振りを見せるため、途切れなく店主の話は続くのです。

主に店主の昔話で、戦時中に先代の店に小僧として修行していた頃の話、はじめに店を構えた時の話、一番目の妻との離婚の経緯など詳しく話していきます。

離婚後、もう店も流行らず停滞している時期にたまたま来た客とのエピソードをきっかけに、店主は勝負に出ます。

借金をして、店を高級店に大改装!周りよりうんと料金を高くして商売を再開しました。高い代わりに、高級品を揃え・腕の立つ従業員をスカウトしました。

これが大当たりで、店は大繁盛しある俳優との忘れられない出会いが生まれ、その出会いがまた店を、更なる繁盛に導きます。

とうとう銀座に2号店を出すまでになり、ある女性と再婚します。

よく出来た女房で、天狗になる店主をうまく叱りまた子宝にも恵まれまして、五十を過ぎての子はそれは可愛いものでした。

しかし良いときは長く続きません。

スカウトしてきた男の独立話で、揉めてしまい店主は結果的にその男を殺めてしまうのです。傷害致死で服役することになります。

女房は嫌がりましたが、子供を女房を人殺しの家族にしたくないとの思いで、強引に離婚して、それ以来逢っていないそうです。

そうした、話の合間に若い男性がデザイン事務所に勤めている事や、イラストのフリーの仕事がぽつぽつ来るようになった事などを聞き出し、店主は都度大したものだと褒めました。

店主は出所後、殺めた男の家族に賠償を済ませ、この場所に店を構えます。

バブルと言う時代が見方をして、お店と家が高く売れた為出来たことです。

さて、散髪の工程も終わりに差し掛かります。ところでみなさん、つむじってけっこう個人を特定出来るぐらい個性があるのをご存知ですか?

散髪屋の主人なら、昔に見たつむじは時が経って見ても、その人だと分かるでしょうね。ストーリーに触れるのはここまでにしておきますね。

最後に店主が、散髪を終えた若い男性を見送る時に後ろから声をかけます。

「あの、お顔を見せていただけませんか、もう一度だけ。いえ、前髪の整え具合が気になりますもので」

ここ、ぐっときますよ!

この作品は本当にお勧めです^^
では、またお会いしましょう。by ネオ